What's New

2021.10.01お知らせ

社会学専攻 新原道信教授 ミラノシンポジウム(2021年9月25日)に参加

2021年9月25日ミラノで、国際シンポジウム「未来は今――いまアルベルト・メルッチと対話する(IL FUTURO È ADESSO: Dialogando oggi con Alberto Melucci)」が開催され、新原道信先生が参加(オンライン)し報告されました。


新原道信先生より以下のご報告をいただきました:


 


このシンポジウムは、イタリア・ヨーロッパを代表する社会学者アルベルト・メルッチの没後20年を追悼し、その知的遺産を引き継ぐためのシンポジウムでした。メルッチは、2001年9月12日、「9.11」の翌日に、白血病でこの世を去りました。


メルッチは、複合社会における社会運動とアイデンティティの不確定性をテーマとする社会学者として知られ、その一方で、臨床心理学者のアンナ夫人との共同研究で、青少年が抱える生きづらさ・痛みに関する濃密な研究を作品化してきました。


これまで追悼シンポジウムは、3回、いずれもミラノで、2002年(「惑星社会におけるアイデンティティと社会運動(Identità e movimenti sociali in una società planetaria. In ricordo di Alberto Melucci))、2008年(「アルベルト・メルッチから...現在のインヴェンション」(A partire da Alberto Melucci…l'invenzione del presente))、そして2021年に行われました。


2002年は、メルッチの師匠であるA・トゥレーヌ、Z・バウマンたちが報告者となった大規模なものでした。2008年は、メルッチの同年代の共同研究者や、弟子筋の若い研究者たちを中心としたものでした。そして、2021年、報告者はさらに若返り、著書を通じてメルッチを知り、大いなる知的刺激を受けたという次世代の研究者たちが報告しました。「新型コロナウイルス」の状況下ということもあり、ミラノ大学やミラノ・ビコッカ大学の研究者以外は、ベルギー、フランス、イギリス、チリ、イタリアの各地などから、オンラインで参加しました。私は、2002年の最終報告、そして2008年の最初の報告に続いて、2021年も最初の報告を担当し、「メルッチとの対話は続く――意味は出会いのなかで与えられる」というタイトルで話しました。内容は、メルッチが2000年5月に日本に来てくれたときに発した言葉である「生体的関係的カタストロフ」から、「3.11」と「新型コロナウイルス感染症」に言及し、ではこうした「問題解決」困難な現実に対峙する“臨場・臨床の智”をいかにともに創るかというものでした。社会によってつくりだされる“痛み/傷み/悼み”の話でしたが、その後は、ジェフリー・プレーヤーやクリスティーナ・F・フォミナーヤなど、若手の社会運動研究者がメルッチの著書からの刺激を語り、最後は、アンナ夫人、そして「痛みの哲学」の泰斗であるサルヴァトーレ・ナトーリ教授の報告、その後に、2000年5月日本でのメルッチのセミナーの映像が放映されました。2002年のシンポジウム前日の夕食会で向かいの席に座ったトゥレーヌ先生が、「こんなアジアの若者も報告するの?」と、アンナ夫人に聞いていた頃から、年を経て、私自身が最晩年のメルッチを識る数少ない人間の一人となっていました。あらためてその責任を感じ、若いひとたちへの「橋渡し」をせねばという思いを新たにしました。


シンポジウムのプログラムと動画は下記のurlで検索可能のようです。

https://www.ledizioni.it/il-futuro-e-adesso-dialogando-oggi-con-alberto-melucci/


https://www.youtube.com/watch?v=cKGZVPXHUrw