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山田 昌弘

Masahiro Yamada

専門分野:家族社会学

愛情やお金(経済)を切り口として、親子・夫婦・恋人などの家族における人間関係を社会学的に読み解く試みを行っている。近年は、少子化、結婚、離婚、家族と消費の関係などについて実証研究している。


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Q&A

社会学とはどのような学問でしょうか。

 テーマは身近だけど、奥が深い。

 といっても分からないと思いますが、私は調査研究する中で人の恋愛・結婚・離婚の話をたくさん聞きましたが、ほんとうに人それぞれです。100回以上見合いをして振られ続け40歳でやっと伴侶に巡り会った男性、好きでたまらないけど泣く泣く離婚した女性――。そんな人々の普段の経験に、社会のあり方やその変化が反映しています。その変化を捉えるのが社会学だと思っています。


好きな社会学者を教えてください。

 アーリー・ホックシールド(Arlie Hochschild)。

 私が1993年にアメリカ・カリフォルニア大学バークレー校に留学したときの指導教授です。「感情社会学」の創始者の一人であり、「セコンド・シフト」「感情労働」「親密性の商業化」そして近年も「共感の壁(empathy wall)」など、学問の壁を越えて、一般用語ともなった言葉の名付け親でもあります。背の高いたいへんおっとりした女性ですが、高齢者施設のコミュニティ、フライトアテンダント、借金取り、そして、60歳をすぎてからもアメリカの右派が多く住む地域に入り込んで精力的に現地調査を行っています。学術論文もすばらしいですが、一般向けに分かりやすい表現で、現代社会の一コマを切り取って示す著作を次々と世に問うています。私の目標とする先生です。バークレー滞在中、毎週一度30分ほど面談の時間を設けていただきました。彼女のエッセイ集に私の発言を引用いただいた箇所があるのが自慢です。翻訳も数多いので、ぜひ、読んでみて下さい。

 

どうして社会学者になろうとしたのでしょうか。理由や経緯などを教えてください。

 高校生までは数学者になりたくて、数学雑誌に問題の解答を投稿していました。当時数学者として有名になりたての広中平祐氏とテレビで座談会をしたこともあります。ただ、私自身が家族に恵まれなかったこともあり、家族の愛情とは何かについて探求しようと思い、美しい数学の世界は趣味としてとっておき、どろどろした家族を研究する世界に足を踏み入れました。その経緯は、『近代家族のゆくえ』のあとがきや、エッセイなどで書いていますので、そちらを参照していただくとありがたいです。

 

近年の研究テーマを3つほどあげて、どのような研究に取組まれているかご紹介ください。

1.結婚支援活動に関する研究

 未婚化が進む現在、公私問わず、私が名付けた結婚活動、名付けて「婚活」を支援する動きが広がっています。結婚支援に取り組む自治体や私企業にヒアリング、そして、結婚支援活動で結婚、婚約したカップルに対するインタビュー調査、そして、若者の結婚プロセスに関して質問紙調査を行いました(2016-19年度の科学研究費での研究です)。現在その成果をとりまとめ中です。

 

2.現代日本の親密性の実証研究

 未婚化、そして、離婚の増大によって独身者が増えています。独身者の親密欲求はどこで満たされているのでしょうか。一つは、日本ではキャバクラやホストクラブなどで親密性を買ったり、アイドルやアニメのキャラクターに恋したり、ペットを家族として扱ったりなど、カップル以外で親密性を満たす試みがなされています。2020年度から科学研究費助成を受け、カップルとカップル外の親密性について実証研究を行っています。

 

3.日本の恋愛、結婚、少子化に関する研究

 

学部の主な担当授業を教えてください。また、そこではどのようなことを教えられていますか。

「家族」ビデオ資料をたくさん使って、現代日本家族の現状、成り立ちと行方について講義しています。

「現代社会研究(3) 」 現代日本社会にひそむ生活上のリスクについて講義しています。

「社会学演習・社会情報学演習」 今年度は、平成時代を振り返るというテーマで、平成時代に社会、特に若者や結婚、恋愛のあり方がどのように変化したか、学習し、討論しています。

 

大学院の主な担当授業を教えてください。また、そこではどのようなことを教えられていますか。

「家族」 現代家族の位置づけについて討論しながらゼミをしています。

  

ゼミではどのような研究ができますか。また、先生のゼミの特徴を教えてください。

 家族や若者、そして、ジェンダー、セクシュアリティなどに関心がある学生が集まっています。みなさんの日常体験を踏まえながら、テキストを読んで発表、討論をしています。

 卒論では、「ゲイ・コミュニティ」「映画に見る非血縁親子の日米比較」「AS搭載ペットと人との関係」「レンタルフレンド」「事実婚」などのテーマがありました。

 

学部1~2年次で読んでほしい本をあげてください。

アンソニー・ギデンズ『暴走する世界』

見田宗介『社会学入門』

橋爪大三郎(編)『社会学講義』

 

学部3~4年次で読んでほしい本をあげてください。

ウルリッヒ・ベック『危険社会』

ジグムント・バウマン『リキッド・モダニティ』

大澤真幸『不可能性の時代』

 

先生の主な研究業績を5つほどあげて、その内容をご紹介ください。

1989年 『ジェンダーの社会学』(新曜社-江原由美子らと共著)

1994年 『近代家族のゆくえ』(新曜社)

1999年 『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)

2004年 『希望格差社会』(筑摩書房→ちくま文庫2007年)

2007年 『少子社会日本』(岩波新書)

 

これまでの研究業績(書籍、論文等)についてご紹介ください。

・単著

1994年 『近代家族のゆくえ』(新曜社)

1996年 『結婚の社会学』(丸善ライブラリー)

1998年 『Japanese Family in Transition』(フォーリン・プレス・センター)

1999年 『家族のリストラクチュアリング』(新曜社)

1999年 『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)

中国語(繁体字)訳、韓国語訳 あり

2001年 『家族というリスク』(勁草書房)

2004年 『家族ペット』(サンマーク出版→文春文庫2007年)

2004年 『パラサイト社会のゆくえ』(ちくま新書)

2004年 『希望格差社会』(筑摩書房→ちくま文庫2007年)

「格差社会」で流行語大賞トップテンを受賞

2005年 『迷走する家族』(有斐閣)

2006年 『新平等社会』(文藝春秋)→文春文庫

2007年 『少子社会日本』(岩波新書)

中国語訳 あり

2009年 『ワーキング・プア時代』(文藝春秋)→ 『ここがおかしい日本の社会保障』文春文庫

2009年 『なぜ若者は保守化するのか』(東洋経済新報社)→2014年 朝日文庫

中国語(繁体字)訳 あり

2013年 『なぜ日本は若者に冷たいのか』(東洋経済新報社)

2014年 『家族難民』(朝日新聞出版)→ 2016年 朝日文庫

韓国語訳 あり

2015年 『女性活躍後進国ニッポン』(岩波書店)

2016年 『結婚クライシス』(東京書籍)

2016年 『モテる構造-男と女の社会学』(ちくま新書)

2017年 『底辺への競争』(朝日新書)

中国語(繁体字)(簡体字)訳 あり

2017年 『悩める日本人-人生案内に見る現代社会の姿』(ディスカヴァー21)

2019年 『結婚不要社会』(朝日新書)

中国語訳 あり

2020年 『日本で少子化対策はなぜ失敗したのか』(光文社新書)

 

・編著

2001年 『家族本40』(平凡社)

2002年 『恋愛と性愛』(早稲田大学出版会-服籐早苗、吉野晃と共編)

2004年 『家族革命』(弘文堂-森謙二、清水浩昭、岩上真珠と共編)

2011年 『婚活現象の社会学』(東洋経済新報社)

韓国語訳あり

2015年 『データで読む現代社会 ライフスタイルとライフコース』(新曜社-小林盾と共編)

2018年 『出会いと結婚』(日本経済評論社-平井晶子、床谷文雄と共編)


・共著

1989年 『ジェンダーの社会学』(新曜社-江原由美子らと共著)

1997年 『感情の社会学』(世界思想社-岡原正幸らと共著)

1997年 『未婚化社会の親子関係』(有斐閣-宮本みち子らと共著)

1999年 『ジェンダーの社会学』(日本放送出版協会-江原由美子と共著)

2000年 『「郊外」と現代社会』(青弓社-若林幹夫らと共著)

2000年 『少子化時代のジェンダーと母親意識』(新曜社-目黒依子らと共著)

2003年 『日本の所得格差と社会階層』(日本評論社-樋口美雄、編)

2007年 『格差社会スパイラル』(大和書房-伊藤守と共著)

2008年 『婚活時代』(ディスカヴァー21-白河桃子と共著)

中国語訳 あり

2008年 『ジェンダーの社会学入門』(岩波書店-江原由美子と共著)

2009年 『幸福の方程式』(ディスカヴァー21-電通チームと共著)

韓国語訳 あり

2012年 『絶食系男子となでしこ姫』(東洋経済新報社 開内と共著)


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